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ただ有明の 月ぞ残れる
憂きにたへぬは 涙なりけり
山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
憂しとみし世ぞ 今は恋しき
閨のひまさへ つれなかりけり
かこち顔なる わが涙かな
霧立ちのぼる 秋の夕暮れ
みをつくしてや 恋ひわたるべき
忍ぶることの よわりもぞする
ぬれにぞぬれし 色はかはらず
衣かたしき ひとりかも寝む
人こそ知らね かわくまもなし
あまの小舟の 綱手かなしも
ふるさと寒く 衣うつなり
わがたつ杣に 墨染めの袖
ふりゆくものは わが身なりけり
やくや藻塩の 身もこがれつつ
みそぎそ夏の しるしなりける
世を思ふゆゑに もの思ふ身は
なほあまりある 昔なりけり